中華バギーとの付き合い方

6-25.半波整流・全波整流に関する考察

このHPの記載内容について実践される場合、全て自己責任でお願いします。愚生およびルナは、一切その責任を負いません。

バッテリー充電に関して、ネットで「全波整流は効率的で、半波整流は非効率的。
だから、全波整流に改良しよう!」というアドバイスを見かけることがあります。

別に半波整流に借金があるわけでもないので、半波整流の肩を持つ必要も無いのですが、電気屋から言わせれば「どちらも、それ相応の仕事をするだけ」で、どっちが優秀とかいうものではないので、少しコメントさせていただきます。
(ただ薄識のため、色々と誤解もあるかもしれません。鋭いご指摘はご勘弁下さい)

なお、すごく厳密に言えば、発電機の回転摩擦の分、少しは「全波整流が効率的」と言えないこともないのですが、それは微々たるエネルギーってか、その他のファクターの方がメチャ影響するので、無視していい話です。

 
少しだけ専門的な話になりますが、発電機から出力される電圧波形は、左図の一番上の図のような「正弦波」になります。純粋に交流波形ですね。

ちなみに右の写真は私のバギー、「ロンシン(と呼ぶの?)製」エンジンの、発電機の出力波形です。(整流器を通す前です)
波高値の最大値(ピーク値)Emaxは40Vです。
波形を読むと、1サイクルがだいたい14ミリ秒ですので、この時のエンジン回転数は約4,300rpmと言うことになります。

なお、出力波形は、正弦波というより三角波に近いのですが、話がややこしくなるのでこれを正弦波とします。(波形は、発電機のコイル形状や配列、磁石の形状によって変わってきます。)

この正弦波を整流器で整流する訳ですが、バイク・バギーの整流器には「半波整流器」と「全波整流器」があります。

この40Vの正弦波を「半波整流器」にかけると、その実効値Er1は、理論的には
Er1=Emax/2=40÷2=20V
(実際に電圧計で実効値を測定すると18Vでした)

また、「全波整流器」にかけると、その実効値Er2は、理論的には
Er2=Emax/√2=40÷√2=28V
になります。
(なんで√2で割るのかは、恐縮ですが電気理論の本でお調べ下さい)

ちなみに半波整流で消滅している下半分の波形分のエネルギーはどこかにダダ漏れしているのではなく、回転エネルギーが電気エネルギーに変換されていないだけの事で、すなわち発電機の回転エネルギーが失われている訳ではないということ。逆に言えばその分燃費がいいと言うこと。

ってか、バッテリー電圧より整流器からの供給電圧が低くなると、整流子により逆流が阻止されるんで、ダダ漏れはありません。って、説明を掘り下げれば掘り下げるほど、ドツボにハマってしまうので、解説なココらへんまでとします。

参考までに「実効値」とは、その波形内面積が直流の面積と同じになる電圧値です。すなわち、「同一時間で見て、直流と同量のエネルギーを持つ交流波形の電圧値」ということになります。って、まだ解説してるっし!!!

さて、問題はここからです。
発電機に何の手も加えないで整流器だけを半波整流器から全波整流に付け替えたらどうなるか。(整流器に保護回路が付いていたらO.K.ですが、なんせ中華ですから・・・)

私のバギーだと、上で計算している通り、20Vで充電するところを28Vで充電することになります。過電圧で充電すると、確かに「よく充電するようになった〜」と実感する事になるのですが、「バッテリーの内部抵抗:R」が同じ場合、「過電圧:E」はすなわち「過電流:I」を発生させることなります。

 E=I×R  :  電圧=電流×バッテリーの内部抵抗 ←懐かしい!(*^_^*)

バイクやバギーに使われている密閉型のバッテリーは、充電時に発生する希硫酸ガスを触媒で還元するのですが、過電圧をかけ続けると、ガスの還元が間に合わず爆発する恐れがあります。(私の経験では、大型充電器で、17V・3Aも流し続けると、約30分で注入口のフタが吹っ飛びます)

また、この半波整流に見られる「脈動」は、バッテリーにとっては決して悪者ではありません。心臓が血液を送り出す「ドキドキ」と同じで、効果的に電流をバッテリーに流し込みます。

バッテリーのサルフェーションを防止するための高価な電子装置「のび●太」も高周波パルスをわざわざ発生させてバッテリーを刺激しています。(ただ、個人的にはこの装置、すごく懐疑的に思っています・・・。)

ということで、理論的には「半波整流器を全波整流器に取り替えるなら、
発電機の出力電圧を下げないと、発生電圧が高いため思わぬ事故につながる恐れがある」と言うことを、お伝えしたかった。(*^_^*)

なお、発電機も同様で、コイルの巻線数は発生電圧と比例関係にあります。発電機のコイルを増設して2個を直列に付けたりすると、理論上は電圧も2倍になります。

整流器に電圧上限値のリミッターがついていれば大丈夫ですが、逆にリミッターが付いていたらコイルを増設する意味がありません。

発生エネルギーを安全かつ効率的にバッテリーに供給するには、「電圧」ではなく「電流」をしっかり確保する必要があります。

そのためには発電機の巻線を太い電線に巻き替えなければなりません。ただスペースの関係で巻線数を少なくしなければならないため、今度は充電に必要な電圧が得られなくなる恐れがあります。

ついでに余談ですが、よく古いバッテリーを安物の充電器で充電した場合、何十時間充電しても満タンにならないという話を聞きますが、それは充電器の能力が小さいため、バッテリーの低下してしまった電圧に充電器の電圧が引っ張られて電圧降圧して、電圧が降下したままの充電では満充電にはならないです。

極論すれば、例えば、充電器が「12.2Vで充電完了」と判断するとして、その肝心の充電器が12.0Vしか課電圧しきらないため、いつまでたっても12.2Vにならないという事です。 
電圧が設定値で常に一定となる「定電圧電源」もしくは、容量の大きい充電器ならそういう事にはなりません。


という事で、実際に手持ちの整流器を試験します。これらの整流器が付いていたエンジンと一緒にとった写真は下にあります
@は一号機のエンジンについていた整流器。全波整流器です。
Aは二号機エンジン。Bは四号機エンジン。
三号機エンジンは既に手元には無いので検証できません。
なお、AもBも半波整流器です。

Cはトランス。発電機の代用とします。
波形測定のために、アイドリングとは言え「ブロロロロロロ・・・」とエンジンを回し続けたら、「うるさい!」と、鬼より怖い、鬼より怖い鬼嫁から包丁が飛んできます。



まず、トランスの波形を測定します。


商用電源の綺麗な正弦波です。このトランスはピーク値で30V程度まで発生する事ができます。私が住む九州は60ヘルツですので、エンジン回転数と同じ単位に言い換えるなら3,600rpmと言うことになります。
写真の場合、ピーク値が13Vですので、一般に呼称される電圧(実効値)では9.2Vとなります。
ちなみに、家庭用電源で言う「100V」は実効値で、ピーク値では「141V」になります。

 
上の写真は、@の整流器(全波整流器)が付いていたバギーとエンジンです。ブランド名は不明です。
発電機は、いわゆる「星形」と言われるコイルが6個配置されているタイプです。
下の写真がその整流器の、整流後の出力波形です。

 
この整流器にピーク値20Vの正弦波を与えて出力された全波整流後のピーク値の写真です。ピーク値で約14V。テスターで測定した実効値は12.2V。

25Vとか30Vとか、入力電圧を上げた場合(エンジンの回転数を上げた場合に相当します)でも、結局、出力電圧(実効値)は12.2Vが維持されるようです。
バッテリーに過度の負担をかけないためのピークカット(保護機能)だと思います。(ある意味、なかなか優秀です)

ただ、そのせいで、いくらエンジン回転数を上げても、出力電圧が12.2V以上に上がらないため、放電が進んだバッテリーに対しても、充電電流は常に0.5A程度で一定でした。
満充電状態とするためには、かなり走り込ないとダメのようです。

 
ご自身のバギーのバッテリー端子にテスターを当てて、エンジン回転数を上げても電圧が13V以上にならないなら、これと同じ「ピークカット仕様」だと思います。これだとバッテリーの充電不足が発生する恐れがあるのですが、これは整流器の仕様なので、対策は整流器を交換するしか無いと思います。(ピークカット仕様の場合、整流器で電圧が抑えられてしまうので、発電機を改造しても何の意味もないと言うこと)

あと申し訳ありませんが、全波整流だろうが半波整流だろうが、新しく購入する整流器がこのピークカット仕様かどうかを購入前に確認する手段を、私は思いつきません。


 
Aの整流器(半波整流器)が付いていた「ゾンシェン(と呼ぶの?)」製エンジン。
発電機は、「二型」と呼ばれる、コイルが二個配置されているタイプです。

下の写真がその整流器の、整流後の出力波形です。
 
絵に描いたようにきれいな半波整流です。入力の正弦波のピーク値が14Vの場合、そのまま半波整流のピーク値も14Vとなります。
この場合の出力電圧の実効値は7Vとなりますが、バッテリー電圧12Vに届かないため、ダイオードによって、12V以下の部分の逆流はありません。

こいつをエンジンに取り付けて測定すると、
回転数に応じてピーク値が変化します。
ちなみに
 ・アイドリング時:出力電圧(実効値)=12.2V。充電電流=0.1A
 ・4000rpm時:出力電圧(実効値)=13.8V。充電電流=1.8A

この整流器はピークカットしない設計のようです。
こいつだと、結構な充電量となります。
なお、充電電流はバッテリーの空腹度(内部抵抗)で大きく変動します。

 
最後に、Bの整流器(半波整流器)が付いていた「ロンシン(と呼ぶの?)」製エンジン。
セル付き、4速エンジンです。セルモーターが下に付いているので、キャブの取り付けが比較的自由にできます。
あ、発電機は、「星形」と呼ばれるコイル配置で、ノーブランド・エンジン(全波整流)と同じです。

下の写真がその整流器の、整流後の出力波形です。

これも半波整流ですが、整流後の波形に乱れが見られます(黄色丸内)。
でも、まあ、電気の世界では誤差の範囲です。Aと同様、入力の正弦波のピーク値が14Vの場合、そのまま半波整流のピーク値も14Vとなります。
この場合の出力電圧の実効値は、黄色枠内でマイナスのエネルギーが供給される分、出力電圧は7V以下となると思います。(電圧測定を失念しました)

ただ、厳密には測定していないのですが、この整流器Bは、上の整流器Aと同程度の充電性能でした。


つまり、どんな発電機だろうが整流器だろうが、「バッテリーにどれだけの電流が流れこむか」という事が大切で、その電流は@出力電圧Aバッテリーの内部抵抗B発電機の内部抵抗に依存するということ。

一番いいのは、発電機と整流器は、それぞれの特性に合ったものをシッカリとペアリングする事だと思います。

なお、整流器の設計思想によって特性が異なるので、これまでの記載内容が全てに適用されるとは限りませんので、ご了承下さい。
整流器の手持ちが3つしかありませんで、種々の検証ができていません。。。(^_^;)

あと、経験上、バッテリーがヘバッている場合でも充電電流は最大でも1.5A程度かな。(上の写真は充電開始直後のため、1.6Aを示していますが、ものの1分で1A前後に下がっています。)

3Aも流れ続けるような発電・整流システム(高い電圧が発生するシステム)だと、バッテリーや整流器を痛める恐れがあります。

特に整流器は、余分に与えられたエネルギーは熱エネルギーとして消費しようとするため、いくら冷却フィンが大きかろうと、その寿命を縮めるであろうということ。

【結論】
発電システを改造する場合、電流値をキッチリ管理して、整流器にもバッテリーにも優しく接してあげましょう!
ヽ(´ー`)ノ
 

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